通称「山門」とも言い、元は「金門五三桐」という 全五編からなる作品の二幕目の作品である。
時は安土桃山時代。天下の大泥棒・石川五右衛門は 京都・南禅寺の楼門にて「絶景かな、絶景かな」と 一面の桜を楽しんでいる。そこに現れた一人の巡礼姿の男。
楼門の柱に詠みしたためた和歌の内容からこの巡礼を 怪しいと睨んだ五右衛門は、小刀の小柄を手裏剣のように 巡礼に投げつける。
すると巡礼は手にしていた柄杓で、 この小柄を受け止め、互いに顔を見合わせる。
実は巡礼は時の為政者・真柴久吉 (モデルは羽柴(豊臣)秀吉)で、五右衛門の父は 久吉によってかつて討たれていたため、 親の仇と知った五右衛門の情念が久吉と ぶつかるという「天地の見得」がこの演目のクライマックスであろう。
本年の山車は、怒りに打ち震える五右衛門が、 楼門の屋根から身を乗り出し、階下に立つ久吉を睨む場面を飾る。 |
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天下の大泥棒・石川五右衛門がいる南禅寺を訪れる巡礼。 時の為政者・真柴久吉である。
久吉は、五右衛門がいることを知り、 「石川や浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」 と楼門の柱にしたためる。
すると、階上の五右衛門が小刀の小柄を投げつけ、久吉は これを柄杓で受け止め、「御報謝」と応える。
御報謝とは、巡礼に対するお布施を与えること。 五右衛門の小柄を「報謝」と受ける久吉の皮肉の効いた返答も この演題の面白いところであろう。 |
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