菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)―。
平安時代に実際に起こった 菅原道真失脚事件をベースに、 二代目竹田出雲、三好松洛、並木千柳によって 歌舞伎・浄瑠璃向けに創作された物語。
「車引き」(車曳の場)は、この三段目である。
世に珍しい三つ子の梅王丸、松王丸、桜丸の兄弟は それぞれ時の権力者たる菅丞相(かんしょうじょう=道真)、 藤原時平、斎世親王の牛飼い舎人となるが、梅王丸の主である 菅丞相は流罪に、桜丸の主たる斎世親王は法皇の下に預けられ、 二人は主を失う。
この黒幕は、松王丸の主にして、 権力を意のままにしようともくろむ藤原時平だった。
失職した二人は、往来でばったり遭遇。 身の上話をしている最中に、時平の先達がやってきて 吉田神社への参拝のために道を開けろ、と言うのだった。
積年の恨みをここで晴らそうと、二人は時平の牛車を襲うが、 松王丸に阻まれ、途端に、牛車を挟んで押し問答になる。
松王丸と梅王丸・桜丸が牛車を曳き合ううち、牛車は大破し、 中から現れた時平のひとにらみで、二人はすくんでしまう。 兄弟は親の祝賀の席での再会を期して別れるのであった。
本年の盛岡観光コンベンション協会の山車は、 見得を切る梅王丸と、大破した牛車から現れる藤原時平の姿を飾る。
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三番叟(さんばそう)―。
歌舞伎「式三番」で、「千載」、「翁」の舞に続いて舞われる演目。
元々、式三番は例式の三番目という意味で、「父尉」、 「翁」、「三番猿楽」の三演目を示していたが、 室町時代以降、「父尉」を省くのが常態で、現在では、 翁の舞と三番猿楽にて行われる、祝宴の舞である。
三番叟の舞は、足拍子を力強く踏み、軽快に踊る「揉ノ段」と、 鈴を振りながら飄逸に踊る「鈴ノ段」の二つからなる。 その由来は、三番叟の舞が、五穀豊穣を祈る舞とされるからで、 現代では主に、祝宴の演目(襲名披露や初春興行など)にて披露される。
本年は、東日本大震災復興三年目の秋まつり。
盛岡観光コンベンション協会の見返しは、 この3年で大きく変わった日本経済や、 日本が北上山地に誘致しようとしているILC等、 だんだんと明るい話題が増えている昨今、 盛岡、岩手の復興の槌音を後押しすべく、 「祝宴の舞」として、三番叟を飾った。
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