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近松半二による時代物の義太夫狂言で、
平安時代に起こった奥州の安倍一族の反乱、
前九年の役や安達原の鬼女伝説を下地にした物語。

舞台は、環(たまき)の宮殿。
幼い皇子・環宮が何者かに誘拐されてしまい、
環宮の守役だった平{仗直方がその責めを負わされ、
切腹を申し付けられてしまう。
 
{仗の切腹の前夜、降りしきる雪の中聞こえてくる祭文の唄。
{仗の娘、袖萩によるものだ。
 
{仗の二人の娘のうち妹の敷妙は、
八幡太郎義家(源義家)の妻となっているのに引き換え、
姉の袖萩は浪人と恋仲になったため、{仗に勘当され、
やがてその浪人とも生き別れて盲目の語り部として、
娘のお君に手を引かれ諸国を流浪していたのである。

門外から聞こえてくる祭文の歌声で、{仗の妻・濱夕は
娘の袖萩と知って嘆き悲しみ、勘当を解くよう、夫である{仗に懇願する。
袖萩も不幸を詫びて許しを請うが、{仗はこれを許さない。

袖萩は自分が駆け落ちした浪人が身元の定まった武士であることが
書かれた書付を{仗に渡す。しかし、この書付にあった名前が、
{仗の宿敵である「安部貞任」であり、この書付の筆跡が
環宮誘拐の犯人である確固とした証拠となってしまう。

降りしきる雪の寒さに震えつつ、
父の難儀を気遣う袖萩は、突然忍び寄ってきた安倍宗任から、
一族の敵、{仗を刺し殺せと短刀を渡される。
その場に駆けつけた八幡太郎義家だったが、
好敵手と見据えた宗任との勝負を預け、通行手形と旅銭を与える。

一方、桂中納言になりすました安部貞任が環の宮殿を訪れ、
{仗に環宮と宝剣の行方不明の責任を問い、
{仗はやむなく責任を取って殿中で切腹してしまう。
 
そして同時に袖萩も、義弟の宗任の言葉に従って父を討つことはできず、
父の後を追って自害してしまうのであった。
 
桂中納言は、{仗の死を見届け、密書を持ち去ろうとするが
義家に偽者の桂中納言であることを見破られてしまう。
正体を現した貞任は、一族の敵である義家に戦いを挑もうとするが、
義家は、「今は戦う時ではない」と貞任を諭し、
今まさに瀕死の袖萩と娘・お君に貞任を引き合わせる。
そして様子見に駆けつけた宗任と共に、
戦場での再会を約して別れるという物語である。
 
本年の演題では、物語のクライマックスで
義家に身分を暴かれた貞任が、自軍の旗である「赤旗」を掲げ、
走り寄った宗任と共に、見得を切る場面を飾る。
 
本年の青山組は、地元の青山町や、厨川(第15分団 厨川 や組)が、
安倍貞任・宗任が八幡太郎義家やその父・源頼義と
「前九年の役」で激戦を繰り広げた厨川柵、安倍館にほど近く、
その地元に所縁のある話の「奥州安達原」から、特に煌びやかな場面を
飾りたいということで、この演題を飾った。
 
 
 

 

 

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原題は、「積恋雪関扉」(つもるこい ゆきのせきのと)。
 
常磐津節の歌舞伎舞踊で、
「重重人重小町桜」(じゅうにひとえこまちざくら)
の舞踊部分のみで構成されている。

舞台は、雪の逢坂の関。
冬にもかかわらず、桜が咲き誇る。
この桜は「小町桜」といい、先帝遺愛の桜だった。
 
この桜を守り、先帝の菩提を弔うため
関の近くに住む良峰宗貞(よしみねむねさだ)のもとに、
かつて恋仲だった小野小町が訪ねてくる。
そこに、仲を取り持とうとする関守の関兵衛(せきべえ)が登場するが、
小町は関兵衛の素性を怪しむ。
 
実は関兵衛の正体は、天下を狙う大悪人の大伴黒主(おおとものくろぬし)で、
小町桜を切り倒して護摩木にすることで、天下が懐に転ぶという占いの
宿願成就のため、その機会をうかがっていたのだ。
 
小町桜を切り倒そうと鉞を振り上げる大伴黒主だが、
全身が痺れて身動きが取れなくなってしまう。
そこに小町桜の精が現れ、大伴黒主の目論みは崩れてしまう、という物語。
 
本年の山車では、
宗貞の館に向かう小町と咲き誇る小町桜の
舞台序盤の情緒ある場面を飾る。
 
 

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